東京高等裁判所 昭和40年(ネ)1821号・昭40年(ネ)1850号 判決
被控訴会社は、仲介委託者が仲介業者の組織、経験、機能等を利用して所期の契約成立の機縁を作らせながら、仲介業者に対する報酬の支払を回避するために契約成立直前仲介業者を排除して直接交渉によつて契約を成立させた場合には商法第五百十二条の規定により、又は事実たる慣習によつて仲介業者はその斡旋によつて現実に所期の契約が成立した場合と同様の報酬請求権を取得するとして本件は右の場合に該当する旨主張するけれども、上に認定したように本件土地建物については被控訴会社の仲介は不成功に終り、改めて第三者である永田夫妻の斡旋によつて売買契約が成立するに至つたものであつて、控訴人金子又は船越が被控訴人に対する報酬の支払を回避するために両控訴人間の直接交渉によつて売買を成立させたものとは認めることができない。およそ被控訴会社のような宅地建物取引業者が被控訴会社の東京都告示の定めるところによつて仲介委託者に対し報酬を請求することができるためには宅地建物取引業者の仲介所為によつて売買が成立した場合又はこれと同視すべき場合、これを換言すれば業者の仲介行為と売買の成立との間に相当の因果関係がある場合に限るものと解すべきところ、上に認定した事実関係によれば被控訴会社の仲介行為は功を奏せず不成功に終り、右の仲介行為と売買の成立との間の因果関係は中断するに至つたものと解するのを相当とする。もつとも被控訴会社において控訴人金子に対しその希望に副う物件として本件土地建物を紹介し、同控訴人に現場を見分させ、控訴人船越と引合わせる等の行為をしたことは先に認定した事実関係によつて明かであるから、被控訴人がこれらの行為について報酬を請求することができるためには商法第五百五十条第一項の規定の趣旨に鑑みてもこの点について当事者間に特約があつたことを要するものと解すべきところ、本件においてこのような特約があつたことについては何等の主張も立証もないのである。してみれば被控訴会社は控訴人金子に対する関係において本件を被控訴会社の仲介によつて所期の売買が成立したものと同視すべきものとして被控訴人主張の東京都告示の定める報酬額の支払を求め、又は被控訴会社が控訴人金子の為にした上記の行為についての報酬の支払を求める権利はいずれもこれを有しないものという外はなく、被控訴会社の同控訴人に対する本訴請求は爾余の争点に対する判断を俟たず失当として棄却を免れない。
(平賀 岡本 鈴木醇)